本記事では、生成AI(人工知能)と著作権の関係について解説します。
この分野は急速に進化しており、特に画像生成技術の進歩は目覚ましいものがあります。
しかし、それに伴い法律的な問題も生じています。
文化庁が提供するYouTube動画や資料を基に、著作権の基本的な考え方や生成AIの法的問題、そして画像生成AIを利用する際に注意すべき点について説明します。
著作権とは?(概要)
基本的な考え方
著作権とは、オリジナルの創作物に対して、作者が法律により保護される権利です。
著作者は自らの作品に対する独占的な権利を有することができ、その作品の利用や配布についての権利を有します。
著作権は、著作者の経済的利益と創作の自由を保護し、文化と創造性を促進するための法制度です。
これにより、著作者は自らの作品をコントロールし、経済的利益を得ることができます。
著作物とは
著作物とは、独創性を有し、形に表現された作品のことを指します。
これには、文学、音楽、美術、映画などが含まれます。
著作物は、具体的な形に表現されていれば、自動的に著作権の保護を受けます。
著作権侵害に当たる場合とは
侵害の要件は「類似性」と「依拠性」
著作権侵害が成立するためには、類似性と依拠性の両方が必要です。
類似性とは、作品間で類似した部分が存在すること。
依拠性とは、一方の作品が他方の作品を基に作成されたことを指します。
これらの要件が満たされた場合、著作権侵害として法的な措置が取られます。
AIで生成した画像に著作権は発生する?
AI生成物の著作者は誰か
AIによって生成された作品の著作者は、法律的には明確ではありません。
しかし、AIの学習データとして使用された作品の著作者の権利が侵害される可能性があります。
この問題は、AIの発展とともにますます重要となっており、今後の法制度の整備が求められます。
現時点での法律家の回答では下記のようになっています。
短い単語からなるプロンプトを入力してAIに出力させた生成物は、著作物とは認められないでしょう。
これに対し、プロンプトの長さや表現内容に工夫を加えて、AIによる生成に人が関与した場合には、その生成物の全部又は一部の関与について創作的寄与が認められ、著作物と認められる可能性があります。
しかし、AIによる生成に人が関与し、その点に創作的寄与が認められるならば、出力された生成物は著作物であり、創作的寄与をした人が著作者ということになります。
創作的な表現の結果である著作物の著作権はその人に帰属することになります。
たとえば、ある程度の長さのプロンプトを打ち込んで画像を生成した場合、そのプロンプトを打ち込んだ人が著作権者となります。
Authense企業法務(https://www.authense.jp/komon/blog/dx-legaltech/2838/)
あくまでも可能性なので、今後の法整備に対して継続的に注目を行うことが重要です。
「AIグラビア写真集」が販売取り下げに
集英社が出版したAIグラビア写真集とは
週刊プレイボーイ(集英社)にて、生成AIグラビアアイドル「さつきあい」がデビューし、デジタル写真集も発売されました。
「さつきあい」はAI画像生成ソフトによって作成され、デジタル写真集はメディアで注目を集めましたが、この企画は「さつきあい」が実在の元グラビアアイドルに似ているとの指摘があったため論争が起き、集英社は販売を終了しました。
AIが生成した画像に著作権が発生するかどうかの問題を浮き彫りにし、生成AIの法律的問題が再び注目されたこの事例は、生成AIと法律との関係を具体的に考察する上で貴重な事例となりました。
なぜ販売休止となったのか
この事例で明らかになったのは、生成AIの制作過程での法律的検討が不十分だったことで、特に著作権や肖像権の問題が指摘されました。
弁護士によると、生成AIが「偶然」誰かに似てしまった場合でも、法律的な問題が生じる可能性があるとしています。
「さつきあい」事例から見るAIと著作権/肖像権の問題
先述したように、週刊プレイボーイに登場した生成AIグラビアアイドル「さつきあい」の事例は、AIと著作権、肖像権の問題を浮き彫りにしました。
集英社はすぐさま「さつきあい」の企画を終了し、その理由として下記のようなAIの制作過程における問題点の検討不足を挙げました。
実在の元グラビアアイドルへの類似性
「さつきあい」の類似性が指摘された主因は、実在の元グラビアアイドルに似ている点にありました。
法的には、特定の写真との構図・ポーズや、容貌の類似性により、著作権侵害や肖像権侵害の問題が考えられます。
著作権侵害の可能性
AIによる学習過程で既存の写真の複製が行われ、その結果として酷似した写真が生成される場合、著作権侵害の可能性があります。
特に、生成過程で特定の人物の写真を主に学習させた場合、その人物の著作権侵害が問題になり得ます。
肖像権とパブリシティ権の問題
実在の人物に似た画像の商業利用は、その人物の肖像権やパブリシティ権を侵害する可能性があります。
特に、「さつきあい」のようなケースでは、元のグラビアモデルの肖像が商品の販売促進の目的で利用されていると解釈される可能性があります。
AIと著作権の関係について:基本的な考え方
近年、AI(人工知能)の進歩に伴い、著作権法との関係が注目されています。
AIによって生成されたコンテンツは、画像、音楽、文章など多岐にわたり、これらの著作権の取扱いは法律の専門家や関係者にとって重要な課題となっています。
ここでは、AI開発・学習段階と生成・利用段階に分けて、AIと著作権の基本的な関係について解説します。
AI開発・学習段階
データの著作権
AIの学習には大量のデータが必要です。
これらのデータはテキスト、画像、音楽など様々で、それぞれのデータには著作権が存在する可能性があります。
例えば、音楽のコード進行や歌詞、写真や映像などが著作権の対象となります。
したがって、著作権が存在するデータを使用する場合、データの利用許可を得ることが重要となります。
特に商業的な目的でAIを使用する際には、データの利用許可が法律的トラブルを避ける鍵となります。
日本においては、著作権法30条の4「著作物は、その他の当該著作物に表現された思想又は感情を自ら享受(楽しむ)し又は他人に享受させることを目的としない場合には、その必要と認められる限度において、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。」とあるように、楽しむための行為ではない学習段階においては利用が可能となっています。
ただし続きにはこうも書かれているのでお気を付けください。
「ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。」
複製と修正の問題
AIの学習過程でデータの複製や修正が行われる可能性があります。
著作権法上、複製は著作権侵害となる可能性がありますが、AIの学習の目的で複製される場合、その複製が許容されるかどうかは明確ではありません。
一部の国では、AIの学習のためのデータの複製に関する特例を設けている場合がありますが、国によっては明確な法律が存在しない場合もあります。
日本においては、著作権法第47条の5にある「行為の目的上必要と認められる限度において、当該行為に付随して、著作物を軽微な範囲で提供する行為をすることができる」とあり、AIによる生成物を他人やSNSに提供する際に、AI生成物に他人の著作物が含まれている場合でも、著作権法第47条の5によって適法になる場合があります。
生成・利用段階
生成物の著作権の存在
AIによって生成された作品を利用する際も、著作権の問題が発生する可能性があり、特に生成作品が他の作品と類似している場合、著作権侵害となる可能性があります。
生成された作品に著作権が発生するかどうかは、その作品がオリジナルで創造的な表現を含むかどうかに依存します。
また、その国の法律によって異なる場合があります。
例えば、生成された音楽や記事が独自の創造性を持っていると国の法律に判断されれば、著作権が発生する可能性があります。
著作者の識別
生成された作品の著作者の識別は困難であり、これが法律的な問題を生じさせる可能性があります。
生成作品の著作者は誰であるか?この問題は未解決であり、AI自身が著作者と認められるか、またはAIをプログラムした人やAIにデータを提供した人が著作者となるかは明確ではありません。
これは法律的に重要な問題であり、著作権の保護範囲や利用許可の取得などに影響を与えます。
例えば、生成によって作成された画像の著作権を主張するには、著作者の識別が必要ですが、これが困難な場合、著作権の主張が困難となる可能性があります。
利用者は生成物の利用において、著作権法を遵守し、必要に応じて許諾を得る必要があります。
私的利用の識別
他人の著作物であるAI生成物(画像等)をXやInstagramにアップロードするような行為は、私的使用のための複製の範囲外であり、著作権法23条1項の公衆送信権の侵害となりえます。
画像生成AIを使用する人が気をつけるべきこと
生成AIの利用は、法律的なリスクを伴います。
ここでは、生成AIを安全に利用するための基本的な指針について説明します。
自ら利用規約を調べる
AIサービスを利用する際は、利用規約を確認し、著作権に関する条項を理解する必要があります。
利用規約に違反すると、法的な問題が発生する可能性があります。
公開前のチェック
著作権侵害のチェック
生成AIによって作成された作品を公開する前に著作権侵害のチェックを行い、他の作品との類似性をチェックし、著作権侵害のリスクを評価することが重要です。
肖像権の確認
生成AIによって作成された画像や映像には、実在の人物の肖像が含まれていないか確認することが重要です。
肖像権の侵害は法律的なトラブルを生じさせる可能性があります。
継続的な法律のアップデート
法律の最新情報の確認
生成AIの法律は日々進化しています。
最新の法律や裁判例を確認し、法律の専門家と連携することで、法律的なリスクを避けることができます。
国際法の理解
生成AIの法律は国によって異なる可能性があります。
国際法の理解と、国際的なコラボレーションにおける法律の遵守は、法律的なトラブルを避けるために重要です。
法律の専門家との協力
法律相談
生成AIの利用には法律的な知識が少なからず必要です。
少しでも心配な場合は法律の専門家と相談・協力し、法律的なリスクへの理解と対策をすることが重要です。
データ利用許可の確認
生成AIの学習や利用においては、データの利用許可を確認することが重要で、著作権が存在するデータの利用許可を得ることで法律的なトラブルを避けることができます。
それは生成される画像等に限らずですが、例えば画像生成AIのStable Diffusionであれば、元となるチェックポイント(モデル)、使用するアップスケーラー、拡張機能等それぞれのライセンスや利用規約すべてに目を通す必要があり、かつそれらを遵守する必要があります。
いずれか1つでも守られていない場合は違反となるため注意が必要です。
これらの指針に従い、法律的なリスクを理解し、適切な対策を講じることで生成AIを安全に利用することができます。
文化庁の相談窓口(「海賊版対策情報ポータルサイト」)
著作権に関する疑問や問題が発生した場合、文化庁の相談窓口を利用することができます。
利用者は、疑問や問題が発生した際には、適切な相談を行うことが重要です。
これにより、正確な情報やアドバイスを得ることができます。
まとめ
AIによる画像生成は新しい技術であり、著作権の観点から多くの問題を抱えており、法的な問題は現在も世界中で多く議論がなされています。
利用者は生成AIの成果物を公開する際に、他人の著作物に類似していないか、誰かに精神的な苦痛を与えないかを慎重に検討する必要があります。
日本でもルール作りが進められているため、生成者・利用者は今後の議論の行方に注意を払うことが需要です。
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