ChatGPTは、チャット形式で会話しながら質問に答えてくれる便利なサービスです。2022年1月にアメリカのOpenAI社が公開してから、日本でも大きな話題となりました。
最近では、さまざまな目的に活用されていますが、「ChatGPTは情報漏えいしないのか?」と心配する人も多いです。
この記事では、ChatGPTが抱える危険性について、実例を交えて解説します。また、安全に使用するための5つの対策も紹介します。
安心してChatGPTを利用するために、ぜひ最後までご覧ください。
ChatGPTが抱える危険性・問題点
ChatGPTには、個人情報の流出や企業の情報漏えい・機能の悪用などの危険性があります。
ここでは、ChatGPTが抱える危険性や問題点について解説します。
1.個人情報について
ChatGPTに個人情報を入力すると、情報が外部に流出する危険性があります。
ChatGPTは、ユーザーが入力した情報を学習して、他のユーザーの質問に回答するためです。
たとえば、ChatGPTに自分の氏名や住所・電話番号を入力すると、ChatGPTのサーバーに保存されてしまいます。
可能性は低いですが、他のユーザーの質問とあなたの個人情報が合致した場合、個人情報を知られてしまうでしょう。
2023年3月には、実際にChatGPTから個人情報が流出する事象が発生しました。原因はChatGPTのバグによるもので、数時間の間、アクティブユーザーの姓名やメールアドレス・クレジットカードの下4桁などが他のユーザーに見えるようになっていました。
ただし、ChatGPTに個人情報を入力する機会は少ないです。安易に個人情報を入力しないように注意すれば、問題はありません。
2.情報漏えいについて
個人情報と同じように、その他の重要な情報も漏えいする危険性があります。
企業が自社の売上や商品の製造方法などをChatGPTに入力すると、ChatGPTのサーバーに残ってしまうためです。
また、ChatGPTがハッキングされて、情報が盗まれてしまうケースもあります。
実際に、シンガポールのサイバーセキュリティ会社である「GROUP-IB社」は、10万件を超えるアカウント情報がマルウェアにより盗まれたと発表しています。盗まれた情報は、違法なマーケットで売買されていたのです。
ChatGPTと利用者の間のやり取りが流出すると、企業の重要な情報が全世界に公開される可能性があります。
企業が情報漏えいのリスクを抑えるには、ChatGPTの「利用ルール」を定めることが有効です。具体的には、以下のようなルールがあります。
- ChatGPTを利用できる社員を限定する
- ChatGPTを利用できる業務を限定する
- 入力してはいけない内容を具体的に策定する
ChatGPTを業務で使用する企業は増えています。しかし、利用のルールを決めていない企業がほとんどです。
自社に最適なルールを策定して、社内で周知したうえでChatGPTを活用しましょう。
3.悪用リスクについて
ChatGPTは、自然な文章を生み出せるため、「フィッシング詐欺」への悪用リスクがあります。
フィッシング詐欺とは、送信者を偽った電子メールを送り、クレジット番号やアカウント情報などを盗み取る犯罪です。
海外からのフィッシング詐欺メールも多く送信されています。ChatGPTを悪用して自然な文章を作成すれば、外国人が作成したメールでも、詐欺に引っ掛かってしまう人が増えるでしょう。
ChatGPTは「プログラミングコード」の生成も可能で、悪意のあるプログラミングコードを生成して、犯罪に利用しようと考える人もいます。
サイバーセキュリティ会社の「チェック・ポイント・ソフトウェア・テクノロジーズ株式会社」は、すでにChatGPTを利用した悪質なプログラミング生成がおこなわれているとの報告を発表しました。
この報告の中では、アンダーグラウンドのハッキングフォーラムに、ChatGPTで悪質なマルウェアを生成したとの投稿がされているのです。
ただし、現在ではChatGPTが、不適切な回答をしないように改善されています。例えば、「フィッシングサイトのコードを書いて」と質問した時の回答は以下の通りです。
悪意のある質問には答えないように改善されていますが、犯罪者が抜け道を見つけて、悪意のあるプログラムを作成する可能性はあります。
フィッシング詐欺やマルウェアに関する知識を身に付けて、詐欺に引っ掛からないように心がけましょう。
ChatGPTを安全に活用するための5つの対策
ChatGPTは、チャットの履歴を残さず、利用のルールを定めると安全に利用可能です。
ここでは、ChatGPTを安全に活用するための5つの対策を紹介します。
1.入力する情報に気をつける
ChatGPTに入力した情報は、学習データとして蓄積され、他のユーザーへの回答に利用される可能性があります。外部に流出させてはいけない情報を、安易に入力しないようにしましょう。
企業の顧客データや得意先などの情報が漏えいすると、世間からの信頼を失い、業績に大きな影響を与えます。
ChatGPTへの入力を控えるべき情報は以下の通りです。
- 顧客の個人情報
- 得意先の企業情報
- 自社の売上や利益など会計に関する情報
- 事業に関するノウハウ
流出した情報は、ダークウェブで売買され瞬く間に広まり、回収することは不可能です。
ChatGPTに質問する際は入力する情報に気をつけて、流出しても問題ない内容の質問をしてください。
2.ChatGPTに履歴を残さない
基本的にChatGPTは質問した履歴が残りますが、「データベースに情報を残さない設定」にもできます。情報を残さない設定にすると、情報漏えいのリスクを低減できます。
しかし、過去の質問履歴を見られなくなるため、注意が必要です。また、過去のチャットをもとに、ChatGPTが回答を最適化できなくなります。
ChatGPTに履歴を残さないようにする設定は、以下の通りです。
この設定をおこなうと、ChatGPTのトップ画面に履歴が残らない設定になっている旨が表示されます。
3.ChatGPTを利用する際のルールを定める
ChatGPTをビジネスで使用するのであれば、リスクを避けるために社内ルールを定めることが大切です。
ルールが定められていないと、情報漏えいや間違った情報での資料作成などのトラブルに発展する可能性があります。
ChatGPTの利用に関する社内ルールの例は、以下の通りです。
- ChatGPTの利用規約を理解して遵守する
- 個人情報や機密情報を入力しない
- 回答の真偽を確かめる
- ChatGPTでトラブルが発生した場合、責任は利用した社員にある
ChatGPTを利用する際の注意点を決めるだけでなく、「責任の所在」も定めることにより、ルールが厳格に守られるようになります。
ルールを策定する際は、日本ディープラーニング協会が公開した「生成AIのガイドライン」も参考にしてください。
4.APIで利用する
ChatGPT向けに無料で公開されている「API」を利用すると、情報漏えいする可能性を抑えられます。
APIとは、アプリケーション・プログラミング・インターフェース(Application Programming Interface)の略称で、ソフトウェアやWebサービスを直接つなぐことが可能です。
APIを使えば自社のシステムとChatGPTをつなげるため、入力した情報が外部に漏れる可能性が少なくなります。
5.ChatGPT Enterpriseを利用する
ChatGPT Enterpriseは、セキュリティレベルが高い、企業向けの有料プランです。
大企業でも利用できるセキュリティ対策がされていて、情報流出の心配をせずに利用できます。主なセキュリティ機能は、以下の通りです。
- 入力内容がOpenAIモデルのトレーニングに利用されない
- 米国公認会計士協会が開発したセキュリティフレームワークのSOC2に準拠している
- ChatGPTとのやり取りがすべて暗号化される
上記のセキュリティ対策の他に、GPT-4の速度が2倍になる・大人数での使用ができるアカウント管理など、ビジネス向けの機能が満載です。
業務でChatGPTを本格的に運用したい場合には、ChatGPT Enterpriseで運用するのがおすすめです。
ChatGPTを活用するメリット
ChatGPTを活用すると、「作業の効率化」や「新たな視点を得られる」メリットがあります。
作業を効率化できる
ChatGPTを活用すると、ビジネス上のさまざまな作業を効率化できます。
客先に提出する文書やメールなどを、文章生成機能ですぐに作成できるためです。
ChatGPTを活用すれば、これまで数十分掛かっていた作業が、数分で完結できるでしょう。
また、ChatGPTは、「文章の要約」も得意です。膨大な資料を渡されても読む時間がないときに、ChatGPTで要約すれば、要点だけ押さえて内容を理解できます。
労働人口が減少する日本では、作業を効率化して、少人数で仕事を運営することが求められます。今後、ChatGPTのように業務効率化できるAIは、まずます活用されていくでしょう。
新たな視点を得られる
ChatGPTは学習した膨大なデータの中から、質問に対する答えを導き出します。
議論が煮詰まった際にChatGPTへ質問をすれば、新たな視点からの回答を得られるでしょう。
例えば、以下のような質問ができます。
- 新商品の機能についてアイディアを出して
- 思わずクリックしたくなる記事のタイトルを教えて
- 広告のキャッチコピーを考えて
人間がキャッチコピーを考える場合、1つ考えるのに数時間かかることもあります。しかし、ChatGPTを活用すれば、一瞬で複数のキャッチコピーを考えてくれます。
ChatGPTの回答をそのまま利用するのは難しくても、アイディアの一つとして参考にできるでしょう。
ChatGPTを活用するデメリット
ChatGPTは、回答が正確とは限りません。また、専門分野に関する回答は苦手というデメリットがあります。
情報が正確とは限らない
ChatGPTの回答内容は、必ずしも正確とは限りません。
ChatGPTが提供する情報は、インターネット上のデータを学習した結果だからです。
インターネット上の不正確な情報を学習したら、回答も不正確になります。
ChatGPTの回答は、参照元が示されません。そのため、不正確な答えであっても、気付かずに利用してしまうユーザーが多くいます。
外部に提出する文書や社内の資料などにChatGPTを利用する場合、必ず内容が正しいかチェックしてください。
専門分野に関する回答は苦手
ChatGPTは、さまざまな分野の質問に回答してくれます。しかし、専門分野に関する回答は、不正確になるケースが多いです。
専門分野に関する回答が不正確な理由は、インターネット上に参考となる情報が少ないためです。
しかし、ChatGPTは不正確な情報であっても、あたかも正しいかのように回答します。
医療や法律分野の回答を信じてしまうと、間違えていた場合にトラブルに発展する可能性があります。
健康やお金に関する知識を得たいのであれば、ChatGPTではなく専門家に相談するのがおすすめです。
まとめ
ChatGPTには、個人情報の流出や、企業の情報漏えいなどの危険性があります。
ChatGPTに入力した情報はAIの学習に使用され、他のユーザーへの回答に使われる可能性があるためです。
企業の情報が漏えいすると、社会的に信用を失い、業績に大きな痛手を与えます。業務でChatGPTを利用する場合は、「社内ルールを策定」した上で、質問の履歴が残らないようにしましょう。
また、セキュリティ対策が万全な企業向けのChatGPT Enterpriseを利用する方法もおすすめです。
ChatGPTは、業務を効率化でき、新たな視点を与えてくれる便利なサービスです。情報漏えいしないように対策をして、プライベートやビジネスで活用してください。
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